晴山雨読

「日本人はなぜ謝り続けるのか」  2008年8月10日 中尾知代著

「日本人はなぜ謝り続けるのか」 2008年8月10日 中尾知代著 最近の韓国による戦争時の賠償要求に日本人は辟易としている。 あまりにも一方的で、何だかんだ因縁つけてとにかく金が欲しいのかとも思ったりする。しかし、イギリスも戦争時の捕虜の取り扱いが酷…

「おじいさんの台所の死」1993年4月10日 佐橋慶女

おじいさんの本音と、終末期の世話をせざるを得なかった子供からの本音が書かれています。おじいさんが日記に綴った本音は、子供は掃除や洗濯、食事の洗濯をさっとまたたく間にしてくれるのは有難いが、じっくりと話し相手になってくれない。家事なんかはど…

「里海資本論」2015年7月10日 井上恭介

「過疎や高齢化の問題は解決できない」とか「市町村の消滅の危機」、「地域経済の活性化は不可能だ」と言っていた人は、たいてい近視眼だった。広島湾ですくすく育つカキのことを考えて欲しい。海のミルクと称される栄養豊かなカキは、広島湾に流れ込む太田…

「料理人の休日」1987年4月25日 辻静雄

「料理人の休日」1987年4月25日 辻静雄 辻調理師専門学校創始者の辻静雄氏のエッセイです。フランス料理を作るという職業に従事する場合、日本人の多くは見習いからの道程を経るのが習わしですが、読売新聞のサツまわりから転向するというズブの素人から始めた…

「アウトサイダーからの手紙」犬養道子1990年3月10日

著者は大正10年4月20日生まれで、犬養毅の孫です。津田塾大を中退して欧米の大学でまなび,各国を歴訪。昭和33年「お嬢さん放浪記」を発表。社会,文化,女性など幅ひろいテーマで評論活動を続け、私たちが日本に住んでいて当たり前だと思っている習慣が海外か…

「隣の国で考えたこと」岡崎久彦 1983年7月10日

韓国と言えば、マスコミからの情報では、元徴用工強制労働や従軍慰安婦の賠償請求でいつまでも経ってもゆすりを続けるようなややこしい国民だという印象を受けざるをえません。貧しさから被害者面して金持ちの日本から少しでも金を出させようとごねまくって…

「凍」沢木耕太郎 2008年11月1日

山野井泰史と妙子夫妻が、ヒマラヤの高峰ギャンチュンカンに登り、前後9日間に亘る不屈の戦いで登頂を果たしたものの、双方とも足や手の指に重い凍傷を負って帰還したノンフィクションです。どれほどの困難を伴ったかは本文にあるとおりですが、人間の身体と…

「子供より古書が大事と思いたい」鹿島茂

マニアックな古書の話かと思いましたが、たいへんおもしろい本でした。 パリの得難い本を送ってくる古書店から届いたカタログには、オーギュスト・ルペール挿絵入りのユイスマンス「さかしま」(1903年)が載っており、価格は7万5千フラン、邦貨にして200万…

アーサー・ヘイリー「ストロングメディスン」1988年5月25日

薬品や医師業界の内幕を見事に描いています。利益を得るために膨大な資金をかけて開発される新薬、激しい競争、副作用などのリスクと隣り合わせの内幕、さらには、医師の中にもドラッグ中毒で身を滅ぼして行く人もおり、それを立場上誰も指摘できないまま見…

村上春樹「遠い太鼓」

村上春樹が1986年から1989年までギリシア、イタリア中心の南ヨーロッパに長い旅行記です。むしろ住んでいたという方がいいのかもしれません。この間に、「ノルウェイの森」や「ダンス・ダンス・ダンス」を執筆しています。 ギリシアの片田舎やエーゲ海の島、…

村上春樹シリーズ

ノーベル賞候補になっている村上春樹の本を読んだことがなかったので、「海辺のカフカ」2冊、「1Q84」6冊、「ノルウェイの森」2冊の、合計10冊を読んでみました。 長編小説なのですが、どれも面白くて一気に読めました。内容とは関係なのですが、「海辺の…

「裁判の非情と人情」2017年2月21日 原田國男著

有罪率99%といわれる日本の刑事裁判で、20件以上の無罪判決を言い渡した元東京高裁判事が、思わず笑いを誘う法廷での一コマから、裁判員制度、冤罪、死刑にいたるまで、その知られざる仕事と胸の内を綴った本です。「裁判官の一番欠けたところは、世情と人…

「腐敗の時代」 1992年12月15日 渡部昇一著

政治などの腐敗を糾弾する内容かと想像してしまうタイトルですが、そうではありません。1992年に書かれたものですが、戦後の高度経済成長期を経て奇跡の復活を遂げたのに、この平和と繁栄の日本に不満が充満していることを、1700年代のイギリスの事例に似て…

「古文書の面白さ」 1984年11月20日 北小路健著

日本エッセイストクラブ賞受賞作だからと買ったたくさんの蔵書の中で、本の題名から古文書の難しい引用がたくさん出てくるのかと勝手に思って最後まで手をつけずに残っていた一冊です。しかし、整理のつもりで読み始めたら何と面白いこと! 著者は会津若松に…

「ふしぎなキリスト教」 2011年5月20日 橋爪大三郎著

聖書には、神様が光あれと言って光と闇が分かれて昼ができた、夜ができたとかいうような、荒唐無稽のことが書いており、宇宙の始まりはビッグバンであり、人間は猿から進化してきたと考える方が主流の時代に、キリスト教を信じるなんてナンセンス、だと思っ…

「ピカソ」 2000年10月16日 飯田善國著②

「立体派」は「青の時代」や「桃色の時代」から決定的に飛躍して、感情と決別して、ロマン主義と別れました。19世紀末に出現した流派で感情を動機としなかったのは後期のセザンヌとスーラーだけだったので、その意味でもこの二人が立体派の先駆者と言えます…

「ピカソ」 2000年10月16日 飯田善國著①

教養ないためにいまだピカソの絵の意味がわかりません。せめて何が描いているのか、少しでも理解したくてこの本を読みました。 ピカソが登場するには二つの世紀が必要でした。そして、立体派(キュービズム)が生まれるためには、20世紀という時代と、パブロ…

「報道電報検閲秘史」2004年12月25日 竹山恭二著

戦争時の検閲について、日露戦争時の郵便局の電報がどのようにチェックされて、国や軍に不都合な部分が削除されたかの具体的な検証です。本来の目的であるのは電報の検閲ですが、軍事郵便でやり取りされた私的手紙の影響も重大です。日中戦争や太平洋戦争を…

「日本<汽水>紀行」 2015年10月10日 畠山重篤著

汽水域とは、淡水と海水が混じり合う水域を指し、日本人はそこから多くの恵みを享受しています。河川水が流れ込む海とそうでない海では、植物プランクトンの発生量は約30倍から100倍も違い、それがそのまま漁獲量に影響します。例えば面積が同じの東京湾と鹿…

「狂気のモザイク」1982年ロバート・ラドラム著

とにかく面白い!文庫本上下2冊で1000ページを超す長編ですが、どんどんストーリーが展開してまったく飽きることなくひき込まれていきます。ラドラムはニューヨーク出身で、舞台活動・劇場主を経て、40歳の時にすべてを投げうって作家業に転身しましたが、19…

「ヨーロッパぶらりぶらり」1994年9月21日 山下清

裸の大将の目に映ったヨーロッパはどのようなものだったでしょうか。美しい細密画と訥々とした文章で綴られるほのぼの紀行です。 ヨーロッパへの飛行機の中で、キャビンアテンダントに対して、「おばさん、おばさん、この飛行機はジェット機で、普通の飛行機…

「ヒトという生き物」 2003年12月15日 柳澤嘉一郎

生物学者の目から見たヒト社会の話で、生物としてのヒトの宿命と性質を考え、過密社会がもたらすもの、戦争の起源、睡眠と記憶の不思議、階級性など、ヒトという生き物はなんと悲しい、なんと不条理な生物なのだろうと悩み考え続けます。 ヒトには、人口の増…

「経済学で現代社会を読む」1995年2月20日

ロジャー・レロイ・ミラー、ダニエル・K・ベンジャミン、ダグラス・C・ノース著 赤羽隆夫訳 日経新聞 本書の原題をそのまま訳せば「公共的争点の経済学」で「応用経済学」の分野に属するが、経済学の入門編から応用実践論まで読者に一編に学ばせてくれる極めて…

「新説・明治維新」

「新説・明治維新」 2016年4月1日 西鋭夫著 私たち日本人は、何かを追求する時にすぐ妥協して、「これでいいだろう」「まあ、いいや」と考える癖がついてしまっているのではないか、それで誰も責任を取らないと警鐘を鳴らしています。 イギリスでは、1750年ご…

「コスモポリタンズ」1994年12月5日モーム7著 瀧口直太郎訳

1886年創刊のアメリカの月刊雑誌「コスモポリタン」に掲載された作品で、1936年にまとめて刊行されたモームの短編小説集です。当時の雑誌の事情から左右見開き2ページに収まる長さに作られなければならなかった、いわばショートショートストーリーのはしりとで…

「アシェンデン」1994年12月5日モーム著河野一郎訳

第一次大戦時にモーム自身が英国の秘密諜報員としてスイスに派遣され、ジュネーブを根城に各国スパイに立ち混じって活躍した時の経験が骨子となった小説です。モーム自身も、どこまでが実際の体験で、どこからが作り話かすでにわからなくなっていると述懐し…

「マネーチェンジャーズ」1978年9月26日アーサー・ヘイリー 永井淳訳

「自動車」「ホテル」「エネルギー」「ストロングメディスン」などを書いたアーサー・ヘイリーの企業小説です。特別なスーパーヒーローが出てきて問題を解決したり推理小説でもないのに、どんどん話に引き込まれ、面白くてあっという間に読んでしまうような…

「月と六ペンス」1959年9月25日モーム著 中野好夫訳

30年近く前に知人から最もお勧めと教えられて読んだ本で、非常に面白いという印象が残っている本です。翻訳した中野好夫氏による解説では、モームがジュネーブでの諜報機関の激務に健康を害して、1918年スコットランでのサナトリウムで静養中に書き上げられ…

「チベット高原自転車ひとり旅」1989.11.10九里徳泰

1986年からチベットを自転車で横断してカイラス山に行った冒険記です。 ラサを8月1日に出発して、最初の町シガツェへ4500m以上の峠をいくつも越えていきますが、酸素が薄くて頭痛はひどくなり、息も肺が痛くなるくらいゼーゼーする。目指す峠がすぐそこまで…

「アブラコの朝」

1995年6月20日著 ほのぼのとしたマンガを描く“はた万次郎”氏が、東京から30歳の時に北海道の下川町に移住するお話です。筆者は私と同い年で、私がバブル前後の大きな渦に巻き込まれている時、このような北海道の自然の中で犬と暮らすような夢を実現したこと…