「狂気のモザイク」1982年ロバート・ラドラム著

イメージ 1とにかく面白い!文庫本上下2冊で1000ページを超す長編ですが、どんどんストーリーが展開してまったく飽きることなくひき込まれていきます。ラドラムはニューヨーク出身で、舞台活動・劇場主を経て、40歳の時にすべてを投げうって作家業に転身しましたが、1971年に半年を費やして執筆した『スカーラッチ家の遺産』でデビューし、その後「ラドラムの奇跡」と呼ばれるとおり、発表した作品がすべて次々にベストセラー入りする驚異的な記録を打ち立てています。「並みのミステリ作家6人が束になっても敵わないほどのスリルとサスペンスに満ち溢れている」とも称賛され、著作発行部数は全世界で2億部に達しているそうです。その理由は「読者に退屈をさせない」という信念が挙げられ、リズミカルで読者を先へ先へと引っ張っていくような表現は、芸能の世界で培った独特のサービス精神が影響しているそうです。
 この狂気のモザイクは、最愛の恋人を自らの手で殺害させてしまった秘密情報員の主人公が、死んだはずの恋人を見かけたところから始まり、国家機密、大統領まで巻き込んだ壮大なスケールで物語が展開し、ホワイトハウス中枢部に潜む陰謀の実体が渦巻いていきます。たくさんの人が殺されていくのですが、そのような血生臭い嫌悪感をあまり感じることなく、最後にはハッピーエンドを予感させるような安心感があります。久しぶりにラドラムを読みましたが、これは面白いと再認識しました。