「日本人はなぜ謝り続けるのか」  2008年8月10日 中尾知代著

 「日本人はなぜ謝り続けるのか」  2008810 中尾知代
  最近の韓国による戦争時の賠償要求に日本人は辟易としている。
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あまりにも一方
的で、何だかんだ因縁つけてとにかく金が欲しいのかとも思ったりする。しかし、イギリスも戦争時の捕虜の取り扱いが酷かったことについて日本に対して非常に悪い感情を持っている。末端の日本兵は捕虜取扱いの国際条約など知る由もなく、十分な栄養も与えずに過酷な労働をさせ、頭を下げなかったりしただけで殴る蹴るの暴行におよび、それでも服従しなければ平気で虐殺した。捕虜の辱めを受けるなら自決を選ぶ文化も災いしたが、上官の影に隠れて宦官のように弱いもの虐めする国民性も否定できない。皆が武士道を曲げないほど成熟した人間でもなかったのだ。どこまで酷いことをしたのか、我々現代日本人も事実をきちんと知り、自省しなければならないのだ。我々は原爆やシベリア抑留の被害者だけなのではなく、多くの無実の外国人を虐殺した加害者でもあるのだ。
イギリスはブレア政権、日本は橋本政権時の天皇訪英時の際に、何とか和解しようと努力していたことがあった。その時はイギリスのマスコミも日本叩きに沸騰していたことを覚えているだろうか。戦争責任をきちんと謝罪していないと声を上げているのは韓国だけではないのだ。日本人との感覚のギャップはどこにあるのだろうか?

日本においては、出征するほとんどの一般庶民にとって、戦争に参加するかどうかは、その正当性を問うたり、意味を考えたりするようなものではなく、「お国のため」の義務だったのではないか。また、映画「戦場のメリークリスマス」を作った大島渚監督のように、日本人は戦争を天災のように、一過性の自然現象であるかのように受け取りがちだ。だから、台風が過ぎ去ればまた普通に生活を始めるように、戦争も、それが正しいのかどうか考えたりしないし、いろいろ文句は言わず、なぜ起こったのかも振り返りはせず、「水に流すべきもの」と思ってしまう。
それに対して英国には、「正しい戦争」という意識がある。様々な国を相手に幾多の戦争を経験してきた英国にとって、今のところ第二次世界大戦は最近の戦争の中では正しい戦争とするべき理由があり、正しい目的に沿って行った正義を守る戦いだというのが公式的な位置づけである。直接的な敵がナチスだったことも考えれば、それもある程度理解できる。そのため、日本が戦争を起こさなければ自分たちの仲間、英国の若者たちは死なずに済んだ、「お前たちが戦争を起こしなんじゃないか」「戦争をするにしても、ちゃんとルールを守れば捕虜は死なずに済んだ」という気持ちが強い。だからその分だけ「植民地をめぐる攻防」という意識が少ないのである。捕虜であった英国人にとって「自分らを動物のように扱ったには日本政府で、天皇ヒロヒトの責任がある。彼の息子はアキヒトで、今は父親が持っていた権力がないというかもしれないが、今日の日本政府はヒロヒトが僕らにしたことに対して、日本政府の名においてなされた残酷さに対する負債と責任を受け入れないといけない。この論理性は無茶なことではなく、受け入れられるものだ。」と考えている。また、英国は何百年も前から大英帝国がやったことを謝っているのだから、日本も問題に真っ直ぐ向き合って「ごめんなさい。戦争で酷いことをやったのは私たちの知らない世代です。そうして、彼らがやったことを彼らは謝ります。」と言うべきだという英国人もいる。その人たちはそれを受け入れるだろうし、それで物事に片がつき、そこから新たに物事が始まる、と考える。
 日本側が元捕虜の謝罪や補償の要求に釈然とせず素直に謝れない背景には、主に四つの問題がある。①BC級戦犯が戦勝国の一方的ないい加減に裁かれた問題、②降伏後の日本兵捕虜の扱いの酷さやシベリア抑留の問題、③英国をはじめとする列強の帝国主義と長年の植民地問題の責任、④アジアに対する列強の分割の過去を問う意識、である。ただ、日本が気を付けなければならないのは、「あちらも悪いことをやっているのだから、こちらを責める権利はない。」と突っぱねたり、「お互い様」と相殺することであろう。日本の過ちは認め、相手の振る舞いの間違いも正せるような正々堂々とした態度を構築することこそ大事だろう。必要以上に苦しめた部分について明確に謝る範囲を決めて謝ったからと言って、日本に対する原爆・空襲の非人道性や、英国の植民地主義を免罪する必要なないと思う。だから、こちらが捕虜を非人道的に扱ったことなどの実態を認めない、あるいは知らないままでは、あちらのマイナス面を指摘する資格も減じていることだけには気を付ける必要がある。個々のイギリス人までが、ソ連の日本人に対する責任を感じることはないからだ。捕虜問題と、ソ連のシベリア抑留者問題を「お互い様だ」と相殺する考えは英国人にはないのだ。
 だからすべきなのは、今後は徹底した実態調査を幅広く進めることが肝要であり、その結果をまだ生きている元捕虜に届けることだ。彼らが一番「なぜ、あのようなひどい扱いを受けたのか?」を知りたがっており、彼らにこそ知る権利があるのだ。対象者は亡くなりかけているのだから、できるだけ早い対応が望まれる。具体的には、真実解明、被害者の苦痛に対する治療費ほか、全国民に過去の事実を知らせる教育である。