晴山雨読
若い子たちが軽い気持ちでヨーロッパに語学留学に来て「ここで何をしてるの?」と聞いても、「いえ、べつに。フランス語かな。なにかあるかなと思うだけで。」と答える。しかし、軽い気持ちで出てきたものには、やはり軽い結果しか与えられない。言葉はなに…
ブリューゲルの絵画には、中世の民芸風の景色にたくさんの建物や人物が登場して、一見、おもちゃの世界のようで子供心をくすぐられます。有名なバベルの塔もそうです。しかし、実はそのような楽しい絵本の中のおとぎの世界が描かれているのはなかったのです…
世界の穀物生産量の推移を見ると、1961年の約9億トンから2007年には24億トンまで増え、一人当たり年間358kgもあり、日本人一人当たりの年間コメ消費量約65kg、小麦約40kgの合計100kg強と比べても3倍以上が生産されており、食糧危機が杞憂であることがわかる。…
キリストとは救世主(メシア)のギリシア語訳である。つまり、イエス・キリストは固有名詞ではなく、「イエスは救い主」であるという意味であった。聖書の福音書の話は、たとえば5千人の人たちを5つのパンと2匹の魚で満腹させたり、海の上を歩いたりするのは…
孔子より約1世紀半遅れの紀元前369年頃~紀元前286年頃、孟子やギリシアのアリストテレスとほぼ同じ時代、中国の戦国時代の宋国の蒙(現在の河南省商丘あるいは安徽省蒙城)に産まれた思想家で、道教の始祖の一人とされる人物です。 その思想は無為自然を基…
「戦場の博物誌」(開高健) 開高健の戦場をテーマに描かれたものは、途中ではけっして止められず、一気呵成に読み通す。開高健自身に突き付けられた匕首の切っ先から目を離せなくなるからだ。しょせん傍観者でしかいられない作者が、何度も戦場の赴いたのはな…
霊の存在を信じ、それをお骨と同一化すること、この感覚を日本人独自の祖霊観、祖霊意識であると答えることはたやすいが、この感覚は決して日本人固有のものではない。世界中の至る所に今も見られるもので、中国にもある。この感覚を掬いあげ、見事に理論化…
外務省勤務のかたわら、宮内庁でも天皇陛下の通訳も兼務したこともある著者が、ことのほか動物が好きで詳しい陛下にささげた本です。博物誌という表題をもち、いくつかの動物を扱っているのに、写真も挿画も全くないことについては、最近の漫画ブームに対す…
日本を代表する動物行動学者のエッセイです。椎名誠が解説しており、自然科学の専門家としての鋭い分析力を持ち、文章もうまく読みやすい、それでいて視点が学者のそれではなく「人間の視線」で書かれています。また、この本を読んでいると、日本がやみくも…
東大の先生にしてアメリカ小説の名翻訳家のよる知的で愉快なエッセイです。 名訳詞家の堀内敬三氏による、「私の青空」の一節に、有名な、「狭いながらも楽しいわが家、愛の日影のさすところ、恋しい家こそ、私の青空」という歌詞があります。しかし、原作者…
写真家のエッセイですが、その描写力にもすごいものがありますが、作者の 記憶力もすごいです。三歳半に弟が生まれた時のことまでくっきりと描かれているばかりでなく、幼い頃の光景から悪夢の内容や複雑な感情まで記憶されていて、その記憶を美化も露悪も…
日本の西洋音楽史上、彼ほど多くの弟子を育てた人間はいないと言われる、斎藤秀雄氏の生涯です。現在、日本の指揮者や音楽家が世界に出てたくさん活躍していますが、そこにこのような偉人の存在があったとは知らず、不見識でした。本人の「サイトウキネン」…
染織家で人間国宝である志村氏のエッセイです。山影の道で語りかけてくるよもぎ、れんげ、げんのしょうこ、いたどり、からすのえんどうなどの草や花から、無限の色を賜り、それを吸い込む糸で織ってゆく思いを綴られています。ものに触れ、ものの奥に入って…
目が見えない筆者によるエッセイです。目が見えないと大変だと思いますが、そのことで本当にたくさんの温かい心と出会うことができたと言います。美しい自然が見ることができなくても、視力ではとらえられない小鳥の声を聞き分け、森の深さを体で感じること…
NHKの名アナウンサーのエッセイです。いろんな分野の一流の人から聞いた明言を綴っています。 バイオリンを通じて才能教育研究会を主宰する鈴木氏からの話ですが、日本中のどのような子供でも、わずか4,5歳で三千、四千もの日本語を自在に操ります。しかし…
2015年、第31回講談社エッセイ賞を受賞した本です。筆者は東京生まれの東京育ち、生粋の日本人です。「未婚のプロ」を名乗るスーさんは、女子になりたいと願いながら女子連中を下に見て、己の女子性を否定する、そのような女子を背負えなかった時代と、それ…
すこしびっくりなタイトルですが、第30回講談社エッセイ大賞受賞した本で、帯タイトルは「母親のダイナマイト心中から約60年。笑って、脱力して、きっと死ぬのがバカらしくなります。」です。著名人の選評は、 ・どこまでも率直な末井さんの言葉には、それゆ…
ニュースでモスクワからいつもリポートしていたNHK海外特派員のエッセイです。ソ連崩壊時の詳しい事情が書かれていて、あまり触れることの少ないロシア事情を知ることができて面白いです。 世界を変えたゴルバチョフの改革は、パンティストッキングが不足し…
経済予測で有名な金森氏のエッセイです。 「選択の自由」を著した、ノーベル賞受賞者のミルトン・フリードマンは、資本主義経済が社会主義経済よりも優れているのは、何を生産し、何を消費するかを人が自由に選択できる点だと主張しました。筆者も戦争時の体…
この2冊を読めということは、今の私がこの2冊に書いてあるようなことができていないということです。 「嫌われる勇気」自己啓発の源流・アドラーの教え 2013年12月12日 岸見一郎・古賀史健著 ・問題は過去ではなく、現在の「ここ」にある。この先どうするのか…
「はしゃぎながら夢をかなえる世界一簡単な法」 2017年9月22日 本田晃一著 ・「無い」前提で考えると、「無い」前提で世界が作られ、「ある」前提で考えると、「ある」前提で世界が作られる。 ・「はしゃいだ気持ちになれるもの」が、自分にとって本当にやりた…
NHK朝の連続ドラマ“とと姉ちゃん”で唐沢寿明さん演じた、暮らしの手帖 で、仕事がものすごくできるが非常に変わり者だった編集長の物語です。花森氏は、戦争時に大政翼賛会宣伝部で働いて、「欲しがりません、勝つまでは」などの戦時標語の普及につとめ、戦…
慰安婦問題などで執拗に攻撃され、我々は韓国人に辟易としています。しかし、私たちも日本に都合のいい理屈で洗脳されてきたのではないかとふと思いました。 筆者が通った小学校は京都市内西部の下町の一隅にあり、かつて日本が植民地支配をした時代に、その…
長崎に原爆が落とされた翌日、B29搭乗員だった米兵捕虜が斬首されました。若くして見習士官だった主人公の青年は、上官の命令に従って刀を振り下ろし、戦後、絞首刑をおそれ逃亡します。戦前の陸軍では、「上官の命を承ることは実は直に朕が命を承る義なりと…
私の一つ上の世代のことで、石原裕次郎や吉永小百合の全盛期を知りませんでした。しかし、それが本題のように大きな意味を持つことを教えてくれた面白い本です。以下は私が気になったところの要点です。 1962年から64年は、吉永小百合の全盛期となった。吉永…
免疫学の世界的権威だと評される著者が、世界中を旅して独自の視点で綴ったエッセイです。 私たちの太陽系は45億年前に誕生しましたが、最初は不毛の天体であったものが約10億年くらいかかって最初の単細胞の生命を生み出したそうです。霊長類は約7千万年前…
堺屋太一氏の昔(1987年)の名著です。太古からの歴史の中に、当時の現代に起こっている似たような例を探し、その後どうなったかを検証しています。 例えば第3章では、「数世紀の間、新しい大地にこの国を創造したのは信心深い素朴な農民であったが、今はそ…
ちょっと古いですが、40年前の名作です。甘えの世界に住んで「馴れ合い」で事が済んで行くのは日本のような同質社会内部だけですが、これからは異質な海外社会と密接な関係を持っていかねばならないので、イエスかノーの明確な意思表示も必要になってきます…
1000人以上の最期に立ち会った著者が、勤務医時代と在宅で看取った死とでは最期の苦しみが全く違うことに気がついたそうです。在宅での最期はほぼ全てが「平穏死」なのです。多くの病院の医師たちは、患者を1分1秒でも長く生かすことが医者の使命と教わった…
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツが予言した未来です。20年近くが経過して実際の世界はどうなったか、たいへん参考になります。 「ビジネスはこれからの10年間に、これまでの50年間に起きた以上の変化を遂げていく。1980年代は品質が問題となった時代で、…