「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」2016年4月15日 ジェーン・スー

イメージ 1 2015年、第31講談社エッセイ賞を受賞した本です。筆者は東京生まれの東京育ち、生粋の日本人です。「未婚のプロ」を名乗るスーさんは、女子になりたいと願いながら女子連中を下に見て、己の女子性を否定する、そのような女子を背負えなかった時代と、それと楽しく付き合えるようになってからのあれこれを書いています。理想という名の正論と目前の現実が大幅にかい離している時、理想以外をNGとしたら必ず自分の首が締まる。ならば、その理想と現実の間に今日の落とし所を見つけよう。それが諸々の事象に対する筆者の暫定的着地点で、これがすごく楽だそうです。
 解説の三浦しをんさんによれば、本書を読んで、私たちは今、それぞれの理想像を毎日生きつつ、それを独自に作りだしているところではないか、と思ったと言っています。「一定の年齢になったら、結婚して家庭に入る」という進路を自動的に取っていた、という時代は終わった。かといって、結婚してもしなくても、働き続けていると困難は次々に降りかかる。じゃあ、専業主婦は楽かというと、もちろんそんなことは決してない。「お子さんの手も離れてきたのに、いまどき働かずにいるの?」なんて、余計なお世話を言われたりします。放っといてくれと、それぞれが好きなように、好きな道を選んでいけばいいはずでしょう!どの道を選ぶにも「自動的」ということはなく、それなりの戦略と覚悟をもって臨まなければいけないのが女性の現状なのです。すごく疲れるのです。でも、常に考え、周囲と自分の気持ちを感じ取りつつ、我が道を行くのは、難しいことだけど、とても自由であるなと、スーさんから勇気をもらったとも言っています。女性だけでなく男性も、生きづらく、それゆえにいとおしい存在であるのは、だれでも同じ。そういう人間の心にそっと触れ、凝り固まった思考を解きほぐす、極上のマッサージを受けたかのような心身の状態になるのが、ジェーン・スーさんの本だと三浦しをんさんは解説しています。

 主旨とは違うかもしれませんが、私が面白いと感じた部分をいくつか記録します。
・無駄遣いのいいところ:
自分に不必要な贅沢がハッキリ見えるようになること。体験しないうちは、どれもが素晴らしいものに見えたままです。格安ツアー以外の海外旅行も、免税店以外で買うハイブランドのバッグも、二十代で稼いだお金を三十代で全額使い果たし、経験しました。同じ景色、同じ鞄でも支払う額が異なると、受けるサービスも異なることを、身をもって知ることができたそうです。

Nissenのいいところ:
 女の服選びで重要なポイントであるサイズが豊富。フィットする服や靴がない時に女が受ける精神的なダメージは途方もない。また、Nissenのサイトは他の女性用衣料系サイトに比べてユーザビリティが非常に高く、サイト内でのうろうろし易さ、カートの使い易さ、二回目からの買い物のし易さなどに優れています。ユーザビリティ研究第一人者といわれるヤコブ・ニールセン工学博士は、使い易いサイトの肝を五つあげています。サイトの使い方を理解できる「学習し易さ」、一度使い方を覚えたら効率的に使える「効率性」、一度使ったらしばらく使用しなくても思い出せる「記憶し易さ」、「エラーの起こりづらさ、もしくは回復し易さ」、楽しく使える「主観的満足度」です。ネット販売において、いかにトップページに客を集めても、一ページ移動するごとにじゃんじゃん客が逃げていくもので、それだけ離脱者を減らせるかが勝敗を分けるのです。商品を選ぶフェイズでは、選ぶことが楽しく、湧いてきた疑問が最小限の移動で解決するようにしなくてはなりません。的確なサジェスチョンで他のページにも誘導しなければいけないし、見込み客に「欲しいものがあるかもしれない」という期待を膨らまさせながら、想像以上のものを見つけさせてあげる必要すらあります。これに必要なのは、斬新なコピーや綺麗なイメージ写真よりも、ていねいな商品解説と分かり易いシステムの構築です。そして、一度購入を決めた人の気持ちが変わらないように、送料は?、いつ届くのか、どうやって支払うのか、Amazonのような洗練されたシステムで、スムーズに購入を完了させることも大切です。
あらためてNissenの魅力を箇条書きにするならば、
①一貫性のない雑多な商品から自分好みのものを掘る楽しさ
②今期だけの流行りのものにも手が出せる手ごろな価格帯
③着られるものが必ずある豊富なサイズ展開
④尋常ではない種類数がハンデにならない、高いユーザビリティ
⑤ブランド力が、デザインではなく雑多性に宿っているところ
(無印やユニクロに揃えてしまうと企業のアイデンティティに自分が埋め込まれたような感じになり、息が詰まる)

・軽トラの桃売りおじいさんの販売テクニック:
 荷台の幌には、遠くから見てもすぐにわかる黄色い紙に大きな赤い文字で「7300円」と手書きのPOP→産地も書いてあり、どう考えても安く、気を引く。
→にっこり笑って、何も言わず一切れ試食させる
→これが7300円は安いと財布に手をかけると・・・、
→「今食べたのは“中の桃”、桃は小、中、大、特大の四種類あり、7300円はこちらの小の桃」と、スーパーではちょっと流通しづらい小ぶりのくすんだ桃を指さす。無料で食べさせるのがワンランク上の桃というのが秀逸。これで下のランクの桃を買う気が失せる。)
→続けて、「中の桃は8個で1000円、大の桃は4個で1000円、特大の桃は3個で1100円」
(桃おじの説明をよく聞かないと、客は視覚的にすぐ商品の値段がわからないシステムになっている。セットプライスが1000円なのは、客にとって比較し易いだけでなく、桃おじにとっても客単価を上げ、小銭のお釣りも少なくて済むいい価格設定となっている)
→「・・でもお客さんにはサービスで、今日だけ中の桃は10個で1000円、大の桃は6個で1000円、特大の桃は5個で1000円にしてあげる」
→私は一人暮らしなので10個(中の桃)はいらない。先ほど試食した中の桃より美味しいはずの大の桃6個を購入する。(桃おじの作戦にまんまと嵌り、見事にカモとなった。)


<桃おじとeコマースの販促の比較>
①毎日、同じ時間、同じ場所に停車する軽トラ
 →追っかけてくるバナー広告
遠くから見てすぐわかる「7300円」の手書きPOP
 →刺激的なコピーでフロントエンド(購入ハードルの低いお試し商品)を宣伝
近寄っていくと、まず桃一切れを差し出されて試食(この時点で私はもう見込み客)
 →バナーをクリックするとランディングページが出てきて無料オファーを提示
興味を持って近寄ると無料オファー、しかしそこにはランク違いで四種の桃が・・・。しかも今日だけの特別プライス!

 →好印象が持てる無料オファーを試すと、魅力的なバックエンド商品がドーンと出現!しかも本日限りのワンタイムオファー(特別プライス)!

※比較し易い選択肢をいくつか用意し、「これより上ならもっと美味しいはず」というこちらの欲も上手に見透かして、それぞれのライフスタイル(独身、家族等)に合せた商品を提示したプロのマーケティング手法

・都営や区営のシルバーピアの妄想(独身女性の場合)
・老後にそれなりの生活するには、65歳から受給できる年金以外に3000万円が必要などと言われている。
・都内にひとり用マンションを買う勇気もなく、65歳から都営団地に入れないかと考えている。
・独り身のまま65歳になったら、断捨離しまくって、できるだけ小さく暮らしたい。
25㎡1LDK、手の届く範囲にいろいろなものが置け、掃除が大変でない広さの域で、他の独身老人たちとのんびり自立した余生を過ごす。
・都心できままに十分な暮らしがしたい。
・気ままにやるには基本的に自分のことは自分でやる。
・断捨離しまくっても捨てきれない荷物もあるだろうから、敷地内にストレージが欲しい。そこには若い男性バイトが常駐していて、ストレージから物を出したり、電球を換えたりするのに力を貸してくれる。若い男性が必要なのは、力仕事と目の保養の為。自分たちと同年代を採用して、住民との下手な色恋に発展しないことを考えての策。
・団地では、たっぷりある時間を使って本を読んだり、同じ団地の女友達とお茶を飲んだりして楽しむ。
・建物の1階にはテナント用の賃貸スペースを作り、老人向けのTSUTAYAと喫茶店を入れる。コンビニもあった方が便利。
団地の駐車場には、移動式の八百屋、パン屋、魚屋が週に3日来て、ちょっとした朝市を催す。女老人だらけのマルシェです。
・四半期に一度はここでフリーマーケットをやる。
・住民によるイベントは活発に行いたいので、団地には会議室もあった方が好ましい。会議室にはDVDプレーヤーも置いて定期的に上映会を行う。
・美容院もあると便利。(住民に元美容師がいると良い)
・住民がそれまでしていた仕事を団地内で続けて、他の住民たちに還元できるシステムを作る。
・食堂もあった方が便利。料理の得意な住民はそこでバイトもできるし、食堂のキッチンで作った惣菜やパンも売ることができる。
・裁縫が得意な人は、お直しの小さな店をやってもらう。
・女性専用アパートなら、警備会社を入れないといけないし、運営の為に管理費を高めに取らないといけない。広尾五丁目のアパートが30㎡台で3万円前後らしいので、管理費込みで5万円ぐらいで住めるといいのだけれど。
・団地に老人だけでも覇気がないので、私たち老人が少しでも役に立つことはないものか。小さな子供を抱えたシングルマザーの為に、団地内に保育園と児童館を作り、仕事の帰りが遅くなる時には、血縁関係のない簡易祖母たちが、子供のお世話を安価で請け負う。
・無職のシングルマザーも、仕事が見つかるまでは団地内で積極的にアルバイトするシステムにする。
・子供はドタバタやっても苦情が来ないように、シングルマザーたちは低めのフロアに住んでもらい、老人たちは足腰を鍛えるためにできるだけ階段を使う。ただし、団地内に手摺はしっかり設置する。
・助け合いは大切だが、何事も善意で回すのは無理があるので、すべてのサービスは安価でも有償にしたほうがよい。
・住民だけでお金のやり取りをしていても住民の総資産は増えないので、団地で提供できるサービスは地域の人も利用できるようにする。例えば、味やパッケージにこだわった独老女団地パンをブランド化して販売したり、安価でお子さんを預かることなど、積極的に外貨を稼ぐ。住民の貯蓄も増え、やり甲斐も出る。


・自力で動けなくなった時に、蓄えで自分をケアできなくなったら退去しなくてはならない。誰にとっても終の棲家になることが理想だが、その機能を備えるとなると途端にいろいろと難しくなる。デイケアセンターを併設したぐらいでは、いずれ立ちいかなくなる。
65歳から元気な間に生活を充実させるアイデアはいくつも思い浮かぶが、動けなくなってから命が終わるまでの期間をどうやって過ごすかが大問題となる。
・一つは、その期間を如何に短くできるかがカギで、自分で健康管理をしなくてはならない。
終身保険に入っていても、長く入院できる病院があるのかどうかもわからない。死ぬまで入居できる老人ホームに住むためには、3000万円では足りないかもしれない。
・この話は未婚老人に限った話ではなく、子供がいたとしても手厚い介護を受けられるとは限らないし、最後まで生き残るのは自分かもしれない。自分の身は自分で楽しませ、自分でケアしなくてはならない時代が来たのです。
・今のところは65歳から75歳の10年間を精神的に豊かなものとして過ごせるようにして、そこから5年ほどを年金+αの蓄えで賄えるように準備するのが妥当でしょうか。