伊丹十三 ヨーロッパ退屈日記


イメージ 1「この本を読んでニヤッと笑ったら、あなたは本格派で、しかもちょっと変なヒトです。」by山口瞳
ヒル伊丹十三の紳士のマナー心得本です。
イギリスで自転車借りようと書類記入すると、そのような職業の人には貸せないと断られる。酔って人を引き殺すような先輩たちのせいで保険の対象外なので映画関係者はだめだそうなのだ。それではもうひとつの職業である商業デザイナーならどうかと相談すると、それでも貸せないと言われる。なぜなら、伊丹十三氏が映画関係者ともう知ってしまったからだと言われる。誠に筋が通ってる。
流行りのヴァカンスルックもいいが、その格好はリゾートか、ドライブ、家でくつろいだり散歩するときに着てもらいたい。夜の劇場やレストラン、ナイトクラブなんかに履いてきて欲しくない。すべての男性が背広にネクタイ絞めてないことに憤激してるのではなく、つまり筋を通して欲しいのだ。
またネクタイにスーツで身を固めた以上は、人前でズボンをたくし上げたり、ワイシャツをズボンに押し込んだり、チャックを直したり、そういう真似はよしてもらいたいのだ。エレベーターで女性より先に降りたり、食卓で楊枝を使うのはよそうではないか。人の私物に軽々しくは手を触れるのよそうではないか。総じて、思いやりの心、謙虚の心、といったものが消え去りつつあるように思われる、とのことです。
伊丹十三氏は見た目は神経質そうで意地悪そうでした。その印象は昔の大河ドラマ吉良上野介演じたのを見たからです。しかし、誠に紳士で正論、よく言ってくれましたというような正統的な本です。山口瞳が評するように、ホンモノの優しさがひしひしと感じられました。