モーム 人間の絆

「人間の絆 結論」の画像検索結果勧善懲悪の英国文学好きはコナン・ドイルから始まりました。

特にモームの小説は、人間の感情を深く洞察して面白いです。

その中でも「人間の絆」は長い小説ですが、以下の言葉のごとく最後に霧がパッと晴れる思いでした。
「考えてみると、半生、彼は、ただ他人の言葉、他人の書物によって吹き込まれた理想ばかりを、追い求めていて、ほんとうに彼自身の心の願いというものは、一度も持ったことがないようだった。いつも彼の人生は、ただすべき、すべきで、動いており、真に全心をもって、したいと思うことで、動いてはいなかったのだ。今や彼は、その迷妄を、一気にかなぐりすててしまった。いわば彼は、未来にばかり生きていて、かんじんの現在は、いつも、いつも、指の間から、こぼれ落ちていたのだった。彼の理想とは、なんだ?彼は、無数の無意味な人生の事実から、できるだけ複雑な、できるだけ美しい意匠を、織り上げようという彼の願いを、反省してみた。だが、考えてみると、世にも単純な模様、つまり人が、生れ、働き、結婚し、子供を持ち、そして死んで行くというのも、また同様に、もっとも完璧な図柄なのではるまいか?幸福に身を委ねるということは、たしかにある意味で、敗北の承認かもしれぬ。だが、それは、多くの勝利よりも、はるかによい敗北なのだ。