1996年7月26日~28日「白山・荒島・伊吹」

1996726日~28日「白山・荒島・伊吹」(計8,927円)
726日(金)
21:40岡山市青江発 高速600
23:16姫路

727日(土)
0:30西宮
4:22福井北(395km
4:53勝山(416km
5:14白峰(439km
5:30市ノ瀬439km)バス380
  白山は交通制限を敷かれていて、市ノ瀬からはピストン運行のバスで別当出合に行かなければならなかった。
 6:02別当出合
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イメージ 3 7:33荒ノ助ヒュッテ
 最初は元気だった。一気に小屋まで登り、蛇口を取り付けた無人小屋で水を補給する。きちんと整備されている小屋で、ここで泊まってもいいように思えた。そして、お花畑コースから室堂に向かう。頂上がすぐ目の前に広がる一大パノラマだ。室堂へはもう一段上へ300メートルほど登らないといけない。
イメージ 4 9:00白山室堂
 とても大きな設備の山小屋で、神社にお参りして目の前の頂上に向かうが、さすがに疲れているせいか、そこからは1時間近くかかった。
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イメージ 99:5010:10白山頂上御前峰(2702m
イメージ 10 多くの遠足の小学生でいっぱいになっている頂上に着く。切り立った峰で、火口湖が見下ろせる。
イメージ 11 人でぎゅうぎゅうの頂上でおにぎりを食べ、火口湖の方に下って行く。
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イメージ 1410:53池を一周して室堂に戻る。この火口湖の大きさはやはりさすがのものである。白山の中心部に相応しい。室堂からは観光新道コースへ下る。当初は尾根道で気持ち良かったが、左手の砂防新道はどんどん下って標高を下げているのに対し、こちらははるかに高い位置にいる。尾根をどんどん越えてかなり進んでから、一気に下る下山道となっている。あまり人が通らないので、こりゃあマイペースでいいわと思っていたが、小屋を過ぎてからは人が増えて一杯になってきて、下りの急坂では多数の集団に紛れて行くようになる。雨が降ったら滑ってとても下れないような泥と岩の急坂を降りて行き、途中で追い抜かせてもらって、急いだために左膝を少し痛めつつ下って行く。林道に出てからもかなりの距離があったが、ようやくバスの待っている場所に戻って来た。水を一杯入れてからバスに乗車する。
13:00別当出合 バス380
 全身が汗びしょびしょで臭うので、Tシャツを着替えて、予定よりもかなり遅くなりながら勝原に向かう。
14:56勝原スキー場 勝山でガソリン補給4,867
 スキー場で右折してすぐ車を停める。10台くらいの登山者のものと思われる車が停めてある。
15:00
15時だから、標準の登り時間3時間と下り2時間で、急げば4時間で往復できて19時には帰って来られるだろうと考えた。降りてきている人とすれ違って、「今から登るの?」と言われるのが嫌だなと思いながら、帽子を被って出発する。真夏の太陽の西日をまともに受けてスキー場を登り、脱水症状になりながらリフトの頂上に辿り着くと、日陰に二人の夫婦がいる。私もそのリフトの日陰に入って休み話を聞くと、この山は登りばかりで本当に辛い。白山より苦しくて面白くないとさんざん後ろ向きのことを聞かされる。彼らが去った後、さっきの日射で汗をかき過ぎて脱水症状気味になったので、今から登るのは止めて明日出直そうかとも思った。しかし、せっかくここまで来たのだからと思い直し、やっぱり登ることにする。そこからは体力消耗で本当に辛かったが、立ち止まって休んでも、一度も本気で戻ろうとはもう思わない。パラパラと下ってくる人たちにすれ違うが、バテていたのもあり、下ってくる人の気配がすると道端に座って、登るのか下るのかわからないふりをしてやり過ごす。「これから?」と聞かれても、夕陽を見に行くのですとどうでもいい嘘をついてやり過ごす。そこからも本当に辛かった。足場は思ったほど悪く無くて登り易いのだけれど、行っても行っても登りで周りの展望も利かない森の中だ。さすがにこりゃあ辛いわと思う。休み休み、予定もかなり遅れてようやくしゃくなげ平に着いた。
17:30しゃくなげ平
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 そこから見る荒島岳はまだまだ遠い。覚悟するが、もう引き返すわけにはいかない。一歩ずつ高度計を睨みながら、本当に数メートルずつ、休み休み登って行く。
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 足場も悪くなる中でかなり苦しみつつ、やっと手前の峰に出るが、そこから頂上につながっている尾根道がさらに遠く見える。太陽はすでに傾きつつ日射しも緩くなり、風も涼しくなってきている。コンディションはとても良くなってきているのに、体はフラフラでまったく力が入らない。何度も休んで、あと少しの最後の登りまで辿りついて、意を決して一気に登り上がる。
18:3418:50荒島岳1523m
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イメージ 19 やっと誰もいない頂上に着いた。やった!もう帰りのことなんか何も考えていなかった。本当に苦しかった。頂上のお地蔵さんに御礼とお願いをした。通常の登山時間よりも大幅に遅れるのは初めての経験だが、よく最後まで登頂できた。汗びっしょりで濡れたシャツを着替え、しばらく大の字で横になるが、蚊がぶんぶん飛んできてまったく休めない。太陽はもう雲に隠れようとしていた。帰りは開き直って、真夜中になってもゆっくりと下山しよう。ゆっくり下ることにする。しかし、歩いて下って行くにつれてフラフラになり、寝不足も手伝って、座るともうダメになる。疲れきって吐き気もするので、途中で何度も道端に引っくり返って休んだ。そのまま地ベタに寝込んでしまう。しかしハエや蚊がうるさくて、しばらくすると立ち上がり、膝を痛めた左足に鞭を打ってまた少し歩く。何より全く力が入らない。少し進んで、また座り込み、そしてリュックを枕にして寝込む。数十分ウトウトと寝てしまうことを数回繰り返しているうちに真っ暗になる。まだ荒島の峰の上から降りていない。真っ暗な中、月は出ているが森の中なのでヘッドライトの明かりがないと何も見えない。痛い膝との四重苦、五重苦の中、何度も休んで気を失い、少し眠るのを繰り返しながら、頂上から2時間半近くかかって、はるかに予定よりも遅い21時にしゃくなげ平に着いた。道中、1時間半も寝て休んでいたことになる。
21:05しゃくなげ平
 真っ暗な中で月と星を見上げつつ、しゃくなげ平でも大の字になって地ベタに寝転びながら40分くらい眠ってしまう。そして朦朧とした意識の中で、いろんなことを幻覚のように思い、またフラフラと下って行く。少し下るともう疲れて動けない。標高1030mくらいのところが最も辛く、少し歩いて、すぐ座り込んで、何10分の間にほとんど標高が下がらなかった。途中でまた二度ほど寝転んで、やっと標高が1000mを切った。しかし、標高1000mを切ってからは一気にリフトまで下ることができる。

728日(日)
 0:00リフトのてっぺんに帰り着く。リフトでまた少し休んで、また意を決して、月明かりの中をスキー場を下って行く。麓の旅館の灯りを目指してゆっくり下って行く。ずいぶんかかってようやく車の所まで戻ってきた。
 0:40車はあった。1台独りぼっちで待っててくれた。ホッとした。そうしていると1台の車が近づいてくる。これから登って御来光を見るのだそうだ。この真っ暗な中をよく登って行くものだと思う。車の中で着替えて準備を整える。山の中で十分寝たせいか、もう目が冴えて来た。車を発車させて岐阜方面に向かう。早く街に出てサウナに入り、体の汚れを洗い流したかった。
 0:58勝原スキー場、白鳥・岐阜を経由して関ヶ原に向かう。ぐんぐん加速して100キロ先の岐阜に向かう。途中でまた眠気がしたので、車を道路脇に停めて少し休む。目が覚めたらまた車を走らせる。そうして岐阜に着いたが、サウナらしきものがない。コンビニで弁当を買い、郊外でようやくサウナを見つけるが、風呂が清掃中で1時間半後の6時にならないと入浴できない。断念して、トイレを借りた後に車に戻る。すぐ戻ってきて逆に良かった。車のライトを点けっぱなしにしていたのだ。そして国道21号線を関ヶ原に向かう。夜は明け始めていたが、伊吹山へのドライブウェイが開いているかどうか不安だ。何回か車を停めて少し眠った。吸い込まれるようにあっさりと眠ってしまい、しばらくして起きるとまた走る。ドライブウェイは715日~825日の間は24時間営業だったが、2700円も徴収された。伊吹山頂はたくさんの人で、ドライブウェイも20分以上かかるかなりの混雑だ。
 6:00伊吹山頂駐車場(674km)  ドライブウェイ2,700
イメージ 20 6:257:00伊吹山頂(1377m
イメージ 1 頂上の日本武尊の像の所で写真を撮り、お弁当を食べて岐路に着く。彦根辺りまでまた何度か車を停めて眠りつつ、ゆっくりと一般道を帰って行く。
10:09京都  国道372号線を亀岡、篠山経由で帰る。
13:30姫路(910km
15:40岡山着
 ほんとうに今回も苦しい登山であった。昨晩には動かぬ体を引き摺って、真夜中に深い森の中で彷徨っていたのが信じられないくらいだ。金曜深夜に一睡もせずに岡山から車を飛ばして白山の麓に向かい、予定より少し遅れたけれども、結局は徹夜と1000m以上の高低差を一日で二山も登った。そもそも無茶な計画だった。でも、車があったからこそ三つも一気に登れた。真夏の日射しの下で全身から汗びしょびしょにかき、久し振りに体中の汚れた体液を入れ替えられたように思う。腹の周りも上半身も少し締まったような気がしている。登っている間はこんな苦しいことはもう二度としたくない、山から降りて風呂に入り、きれいな生活をして、テレビを見ながらビールを飲むのが天国のように思えたけれども、終わって落ち着いてみると、すでにその苦しさを忘れ、また次の目標を見据えてカレンダーと睨めっこしている。山は単なる現実逃避なのであろうか。初めはキリマンジャロに登れれば一種のステータスになると甘く考えていたが、これから百名山を完登しても別に誇れるほどのものでもない。単に自己満足でしかない。だけどももう止められない。