1994年7月22日~24日「飯豊山」

1994722日~24日「飯豊山(計21,890円)
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 昼前に天気予報を聞いて台風が来る可能性が無くなって晴天が続くと言っているので、すぐ交通公社で夜行バスを予約した。しかし夜帰る頃にはかねてからの貧血気味でまったく力が入らなくなり、切符代捨てても中止してゆっくり寝ようかとも考えた。東所沢に帰宅したのは夜9時で、10時半の電車に乗らないと間に合わないのに、ラーメン屋でレバニラ炒めを食べる。しかし、それが幸いしたのか元気が出てくる。食事を取っていなかったので力が入らなかったのかもしれない。ずいぶん迷ったけれど、少しの無理でも実行した方がいいといういつものルール通りにすることにして、元気を出して電車に乗った。夜行バスに乗るので不安だが、駄目なら途中で引き返そうと割り切って行く。
22:37東所沢 JR210円、食事1,850
23:24大宮 東武150円 ジュース220
23:55岩槻発 夜行バス4,750 物凄く侘びしい岩槻駅23:36に着き、先に仙台行きのバスが2台発車して行ったので、どのような感じで来るのかがわかった。バスは少し遅れて0:05頃に一号車のサロンカーが来るが、運転手にちょっと待っててと言われて見送る。少し経ってから二号車が来るが、普通の観光バスで狭そうだ。指定席に座ると、左にすごく太ったおじさんが座っており、肌を擦り合わせるように寝る。お互いに窮屈なのでなかなか眠れない。途中から急に暑くなってきて体が火照り眠れない。パーカーを脱いだあたりから少しずつ眠れるようになり、午前3時の休憩の後、福島で何人かが降りたにもかかわらず熟睡しており、気がついたら米沢に向かう山中を走っていた。私は左の席が空いたので移り、ようやく太ったおじさんもリラックスできる。しばらくして米沢三丁目に着いた。

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 5:10米沢東三丁目 すごくひなびた町だが、すぐ前のコンビニに入ってロッテの監督がラフィーバーになるという日刊スポーツを買って、駅まで歩いて行く。想像以上に駅前は簡素だ。駅舎は建て替えたばかりできれいだが、駅前には何もない。これが上杉家の城下町かと思ってしまうほど、東北の町は淋しいものだ。イメージ 1
6:01米沢駅 JR1,090円、牛乳他710
駅でおにぎりと牛乳を食べていると、改札が開いたので米坂線に乗車した。1時間半もかかるのでだんだん気持ちよくうたた寝し、その間に小国に着いてしまった。
7:37小国 JRバスを待つが、先行する朝日平行には誰も乗車しない。
7:50発 バス910
飯豊山荘へは途中の道路が舗装されていないために砂利道を通るが、時間通りに着いた。
イメージ 28:50飯豊山
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 少し山に向かって歩くと登山手続きの札が置いてあるので、記入して出し、おじいさんに石転び沢の様子聞いた。718日現在の雪渓の状況図をもらうが、アイゼンがないとちょっと危ないと言われるが、ゆっくり行けばいいでしょう?と返すと、そうね。キックステップでねと言われたので、安心してずんすん山道を進んでいく。体調は悪くない。
9:10温身平
10:50石転び
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 しばらくすると前に人がいたりして待つようになり、そこでもらった雪渓の注意書きを読むと、アイゼンもピッケルも持たないのは無謀だと書いてあり、多少心配になる。しかし、もう2時間も進んでいるので今さら引き返せない。戻って迂回しても山頂には登れないからだ。行けるところまで行って、駄目なら引き返そうと腹を決める。正直この時点ではほとんど諦めかけていた。それでもゆっくり少しずつ進む。
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  石転び沢からの雪渓は比較的なだらかだったが、北股沢出合の少し下からは急登になっている。
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  上からさっさと降りてくる、爪のはえ地下足袋をしている一人のおじさんに聞いてみると、アイゼンなしでは相当辛い。でも、梅花皮小屋に着く頃には日が暮れるだろうが、危なくはない。すべてこのような傾斜だと教えてくれる。それで元気を取り戻してまた少しずつ登って行く。右斜面に猿がいた。北股沢出合のところの水はたいへん冷たくて純で旨い。水筒の水を入れ替えて、荷物を整えて、中之島に向かう。ここからはすぐなのに、それまでが最も傾斜がきつかった。
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  ずっと前後して進んでいた二人組の男性のアイゼンを見上げながら、なんとか付いて行き、中之島にやっと辿り着く。
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  土の上に出たらこっちのものだと思ったが、現実は違っている。
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   雪渓以上の急斜面を喘ぎながら登り、何人か追い越して、最後の雪渓横断の難所もすぐ越えられ、なんとか梅花皮小屋に着いた。
イメージ 1014:00十文字鞍部
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 少し休んでいたらにわか雨が降ってくる。ザックカバーをつけて梅花皮岳を目指す。あの苦しい登りを乗り越えたので、苦しい斜面とはいえども通常の山道は安心で、足を出した分だけ着実に進む。
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 頂上に着いて湯を沸かしてカップヌードルとトン汁を食べる。旨いが食べ過ぎた。
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そのあとの御西小屋への道のりが大勝負だったのに、最初は体が重かった。
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 も半分以上進むと調子が出てきて、何人も追い抜いて小屋に着いた。
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ブロッケン現象に出会う。子供のころ、アルプス登頂記で読んだことがある。快晴で太陽の光を満面に浴びる反対側の尾根にガスがたち込めたとき、自分の姿がまるで光輪を背景にした仏様のように見える。西欧ではキリストの姿のように感じるのだろう。誰も登ることもないこんな山奥に一人で入った修行僧がこの光景を目の当たりにすれば、当然奇跡と感じるだろう。自分は天井の世界で阿弥陀様にお会いしたと言うであろう。この光景をじかに見
たら、それは決して嘘とは言えないと実感する。
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16:30御西小屋 小屋代1,500
イメージ 20 飯豊山頂小屋まで行くことも考えたが、遅く着いて小屋が満員だったら困ると思い、目の前の御西小屋の中も覗く。そうすると少しスペースがあるので荷物を置かせてもらう。そして10分ほど雪渓を下った水場に行って体を拭いて水を汲み、コンタクトレンズを外して洗って小屋に戻る。
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  中で着替えて外に出ると、今18:53でもうすぐ日没だ。夕日が沈むのをゆっくり見る。ガスに囲まれた夕日も美しい。19時ちょうどに水平線に夕日が沈んでいき、たいへん美しい。
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みんな慌てて写真を取っている。体調もよく、後輩からもらったウィスキーのミニボトルを少し飲む。周りの人たちはみんな夕日に感動している。無理して来てよかった。本当によかった。今日はきっちり日が沈むところまで見極めた。夜は文句ばかり言っているじいさん夫婦の隣に寝るが、相変わらずマナーの悪い人が多い。また、無線仲間の人たちも大挙して押しかけており、小屋と外のテントの半分はその人たちらしい。

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 3:00起床 朝3時に近くの人たちがごそごそと早立ちしだしたので、それにつられて私も小屋を早朝に出る。
 3:30小屋を出発
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 てっきり夜空が美しいのではと思っていたが、一面のガスで20メートルくらいしか視界が利かない。月もガスに遮られて頼りなく、そのまま進んでいいのかと迷う。他に誰もいない上にヘッドライトの電池も切らしている。心細くて、夜明けまで待とうかとも思ったが、このまま行けば飯豊山頂で日の出を拝めるし、昨日見た稜線は山頂までそれほど起伏がないはずだ。恐る恐る進んでいくと、登山道ははっきりしている。月がガスに包まれながら、そのまま吸い込まれるように時々顔を出す。恐ろしいようで、神秘的でもある。そのような山頂稜線の草原を一人で歩いて行く。30分くらい進んだところで、飯豊山方面が少し晴れて、右前方の空がうっすらと明るくなってきた。少し勇気づけられる。それからもガスは多かったが、ゆっくり歩いた。最後の登りは二重三重の坂で相当こたえたが、何とか頂上に着いた。
5:005:30飯豊山 前方から三人連れの人たちが登ってくる。左方面の谷からガスがどんどん吹き上げてきて、10分後には霧の中になるが、しばらくするとまた晴れて、前方の低空の雲のじゅうたんの上にひょっこり太陽が顔を覗かせる。たいへん神秘的な一瞬だが、それもまた本当に一瞬で、またガスに包まれる。
イメージ 24 頂上を下ることにして、しばらく降りて尾根沿いの広い草原を進むと、すぐに飯豊山小屋に着いた。その神社の前でお湯を沸かし、パンとカップラーメン、コーヒーの朝食を取る。上空ではヘリコプターが大きな音で旋回している。食べ終えて出発する。
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イメージ 26 一王子からの急な御前坂を下った時に、ヘリコプターは着陸できたようだ。
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 途中で若い子たちのグループに何組も出会う。そして中年のおじさんグループを追い抜いて行く。草履塚から振返る飯豊連峰は圧巻で、大日岳方面から本山までの稜線がきれいに見渡せる。
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 こうして見るとすごくなだらかな稜線で、高原というイメージがする。残念ながら昨日はガスで視界がほとんど利かなかったけれども、この山はアルプスのようで、縦走できてとても嬉しい。切合小屋に予定よりも30分早く降りてきた。
 6:20切合小屋
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 一気に三国岳に向かうが、結構厳しい稜線で、アップダウン繰り返しながら最後の登りを登って三国小屋に着いた。たいへんたくさんのグループが後から後から来ているので、私も休まずに下って行く。ここからは岩の峰を一気に下るところで少し恐い。迂回路はないので、岩の尾根を少しずつ下って行く。だいぶん降りると鎖場になる。不本意だけど下るしかない。ゆっくり伝って降りて行くと、さらに真下の方に下り、そこから同じくらい登り返すと地蔵山だ。あそこまで登るのは嫌だと思うが乗り越えなければならない。諦めて最後の登りをゆっくり進む。途中で二人組のおじさんを抜き、しばらく行くと分岐に出た。左手に地蔵山、右手は水場を経て横峰と書いてある。このまま登り返すより、右手を巻いて行く方が楽だと思って進むが、道を間違う不安もよぎる。湿っぽい森の中を少しずつ巻きながら下って行く。だいぶん経って右下に水音が聞こえてくるようになり、すぐ下に水場があった。ザックを降ろしてコップで飲んでみると、案外冷たくておいしい。だからタンクの水も入れ替えた。そのあと真っ黄色な小便をして進み、途中会う人達に御沢方面への下りで間違っていないか確かる。笹平、上十五里、中十五里、下十五里をゆっくり通過しながら、横峰で1230メートルの標高だったのを、一気に600メートルまで下って御沢小屋に着いた。
9:30御沢小屋 野菜直売りの小屋のようなところで、おじいさんが2、3人の人たちに案内をしていた。すぐ横のところに水が出ていて、頭からかぶった。そして御沢キャンプ場を右手に見ながら林道を下って行く。そうして30分弱で川入りに着いた。
10:35川入 風呂550円、会津バス1,000
イメージ 30 すごく田舎の温泉で、民宿ばかりだ。一軒目では入れず、二軒目で風呂に入れてもらう。汚いショートパンツを脱いで体と頭を洗いすっきりし、急いで荷物を整理した。民宿のおばさんがお茶を入れてくれる。梅の実そのものの梅干しをガリガリとかじる。これがここの健康法なのだろう。バスの時間まで10分になったので、おばさんにお礼を言ってバス停まで5分ほど歩いて行く。山都までは下山客は二人だけで、バスはすごい山の中を抜けて一ノ木を通り、ひなびた山都に着いた。少し日焼けした。ビバ会津とやまびこの指定席券を買って帰路に着いた。
11:25山都 JR8,720円、ビール230
11:52
13:42郡山着
13:47
14:54大宮
15:40東所沢着