1994年10月8日~9日「八幡平・岩手山」

1994108日~9日「八幡平・岩手山(計30,690円)
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4:45東所沢缶詰、パン、1,060
昨晩は4時間しか眠れなかったが、目覚ましできちんと起きられて上野に向かい、始発のやまびこに乗り込む。一緒に行く友人は地下鉄の接続が悪くてぎりぎりだったので、少し焦った。
6:00上野JR岩手八幡平周遊券+新幹線20,910
新幹線の中では熟睡する。盛岡到着前にコンタクトレンズを入れてトイレも済ませる。
8:38盛岡着  3分の余裕しかなく、八幡平行きのバスに急ぐ。
8:42発バス1,230
バスは少し旧型だが観光用のバスで、行列はあったものの何とか補助席に座ることができた。臨時のバスも含めて、合計でなんと180人以上の人が乗り込んだことになる。ゆっくりバスは進み、それぞれのバス停で待っている人たちに後続で臨時バスが来るからと伝えて行っている。2時間くらいかけて進む中でうたた寝するが、いきなりザワザワし始めたので今どこかと思うと、茶臼口でたくさんの乗客が降りる。
10:40八幡平頂上バス停バスを降りて、レストハウスに荷物を置き、売店でリンゴ150円を買って、水も補給する。
11:40石畳で整備された道を歩き、八幡平頂上まで行って一周するが、観光化され過ぎてもう一つの印象だ。曇天ながら見通しは良く、はるか遠くまで見渡せる。
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 その後、頂上のレストハウスまで戻り、荷物を背負ってそのまま裏岩手縦走路へと入って行く。イメージ 4 

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イメージ 6 アップダウンの少ないなだらかで低木ばかりの、東北北端独特の風景だ。八甲田も同じような感じだった。しかし、道が狭くハイマツなどをかき分けて進むため、歩きづらくてかなり苦しむ。重い荷物も原因かもしれないが、長い距離なのでほんとうに苦しい。
13:00諸桧岳(1514m
14:10嶮岨森
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15:10大深山
地図には老朽化と書かれてあったが、それほどでもなく、こじんまりとして建て付けはしっかりしている。泊まるのはここでもいいと思ったが、明日の行程を考えたら少しでも岩手山に近付いていた方がいいので、夕暮れとの闘いで三ツ石山荘へと急ぐ。大深山を過ぎた後の急なアップダウンはほんとうに苦しい。何とか下って、そこで休憩して水を一杯飲み、休みもそこそこに今度は100メートルの急登を少しずつ登り切る。
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イメージ 1216:10小畚山(こもっこさん1467m
イメージ 13 360度の眺望で駒が岳や乳頭山も見えるが、風が冷たくてあまり長時間じっとしていられない。
イメージ 14 また山荘目指して進むが、そこからの尾根は紅葉が所々にあってとても美しく、高原を歩いているようで気持ちが良い。
イメージ 15 三ツ石山まで辿り着くと、そこからは岩の道を急降下する。友人のペースが落ちて、そこからは私が先に歩く。20分ほど下ってついに山荘に入った。ほんとうにしんどかった。
17:20三ツ石山荘着
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 山荘は思ったほど人がいないが、結局下の土間に寝ることにして、友人が2メートル四方のシートを広げてその上にシェラフを置き、夕食を作り始めた。丸一日ほとんどまともに食べていないので、腹が減った。私の鍋に半分米を入れて四杯分の御飯を炊き、すき焼き丼とカレー、味噌汁を食べる。
18:00真っ暗になる
18:50私は二杯食べてコーヒーを飲み、ようやく眠れそうだ。外はびっくりするくらい多くの星が輝いている。満天の夜空で、正面に北極星が大きく見え、左下の山なみに寝そべるように北斗七星が輝き、反対の右斜め上空を探すとカシオペア座がはっきりと見える。そして、その隙間に無数の星が散らばっている。
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19:07食べ物を片づけてシュラフを敷く。荷物も入れてやっと寝る体制になる。今日はセリーグの巨人×中日の最終の優勝決定戦だ。落合がホームランやタイムリーヒットを打って今のところ大活躍し、初盤で3×2と巨人がリードしている。全国的に注目されている世紀の一戦である。
 
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5:00起床 5時過ぎに起床して、昨日最後に小屋に到着した青年が暗い中を早々に出発して行く。今日は時間があるのでゆっくり山菜きのこ御飯を炊いて、マグロステーキの缶詰、味噌汁、ごはんですよをおかずに食べて、残りを弁当に詰めた。外に張った外人のテントは夜露でびしょ濡れになっている。昼に太陽で蒸発させられて大空に上がった雲が、夜は冷やされて地上に落ちてくる。それが朝太陽が昇るとともに、再びだんだん暖められて、また水蒸気となって雲を作る。だから朝は晴れて見通しがきくと言うことがようやくわかってきた。トイレに行って、荷物をまとめた後、小屋を出発する。
6:50小屋出発
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 道はどろどろで歩きにくい。足元に注意して神経を擦り減らし我慢しながら登って行く。
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 桧倉山まで行くと気持ちの良い尾根歩きになり、大深山までよく見渡せる。笹に覆われた涼しい尾根を伝って行くが、ついにまたアップダウンが始まり、森林の中へ突入する。重い足の上を黒い粘土状の泥がまとわりついて何度か転び、しまいには右手拳のまま地に手をついて中指を突き指してしまう。しばらく我慢して進んで行くと、急に標識が見え、あっけなく網張のリフトへの分岐に着いた。
8:108:26網張分岐で荷物を置いて、水、ガスコンロ、鍋と弁当を手提げ袋に入れて、買い物スタイルのままで岩手山へ向かう。大倉山への途中で巻き道を行くが、先を行く友人の靴で跳ねた泥が私の右目を直撃した。コンタクトレンズを入れているのでたいへんだ。目薬で洗って何とか応急処置をするけれども、目の違和感がずっと消えないまま登山を続ける。しばらく行くと広場のような場所に出て、そこから少し下ったところに水場がある。冷たい水を飲んだ後、先ほどの汚れたコンタクトレンズを再度外してよく洗い直す。何とか大丈夫だ。そこからは鬱蒼として足下の悪い森林を抜けて行く。だいぶん歩いて、姥倉山が近づいてくると、坂が階段状になっていて高度を一気に稼げる。やがて笹に覆われた尾根が見え、さらに向こうに青空が見えてくる。そこで姥倉山の分岐に到着した。
9:20姥倉分岐ヶ城コース経由
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 岩手山が正面にどっしり構えていて雄大な眺めだ。それを見ながら雲上でみんなが休憩している。これから行く鬼ヶ城の剣が峰と不動平も見渡せる。私はさっき水場で使ったコップを洗わなかったせいで、ビニール袋の中がびしょびしょになったので、一度すべて出して裏表を逆にして乾かし、入れ直した。黒倉山への登りを少し行って、途中から右手の巻き道を取り、森林の中を進んで行くと、しばらくして黒倉山への道と合流する。そこから少し登ったところでお花畑への分岐だということがわかった。想像していたような草木のないカルデラとは違い、森林になっている。そこから1617mをまず目指し、急登してそこに達したら、次は1700m
そこまで行くとさらに向こうの1800mへ、そのように鋸のような尾根が続いている。
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 途中に少しだけ危ない岩場があったが、予想と違って道は安全だった。岩手山が左のすぐ前に近づいてきた頃、ついに最後の1900mへの登りとなる。
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右手に下る道が見え始めてすぐに分岐となり、そこから不動平の小屋に一気に下る。
11:00不動平
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休憩所は泊まることのできる設備で、きれいでいい。しばらく草の上に寝転んで休んだ後、荷物を置いてカメラだけ持ち一気に頂上を目指した。たいへん多くの人が頂上へ向かう坂で列を成している。遠足のような学生もたくさんいる。急登だが、砂走りの踏み跡をザクッザクッと大股で登って、多くの人を追い抜いて行く。やがて火口淵に辿り着いて、少し傾斜のゆるやかな踏み固められた道を友人と並んで歩いて行く。右手の火口中央には丸い山があり、頂上にはケルンが積んである。その外輪山には50メートル置きくらいに地蔵さんが中の中央の方に向かって立っている。よくこんな重い石を運んだもんだ。しばらく登っていくと、左手には昨日縦走した八幡平からのルートがすべて見渡せた。
11:30岩手山頂頂上はあっけないが、多くの人たちでごったがえしている。晴天で、風は涼しいが、シャツだけでも寒くはない程度だ。
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 盛岡側には雲が湧き上がっている。その反対側には、昨日から縦走してきたルートが一望によく見える。遥か遠くの山なみまでよく見える。北の方の3~4枚の山なみの向こうにうっすらと聳えている山が、岩木山か八甲田かと想像する。
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 岩手山は中央にカルデラ型噴火口があり、中央の丸い山が神様として祀られている。友人と二人で写真を撮って一周しながら、下りについた。さっきの火口中央の丸山には、麓に湯が噴き出していて煙しか見えない。そこには神社と地蔵さんが祀ってある。その後、火口淵に出て、一気に砂走りを大股で降りる。なんと5分くらいで不動平まで降りてしまう。
12:0012:30不動平そこでお湯を沸かしてコーヒーを飲み、朝残った山菜きのこ飯にごはんですよをとっぷり付けて食べた。
13:02お花畑までは楽な下りかと思ったが、案外、森林の中を急斜面を下って行く。ずいぶん歩いて行く。途中、2km1km700m300mという標識を通過していき、お花畑はあっけなく現れたが、思ったより狭い。振返って岩手山の写真をもう一度撮って休憩する。間もなく地獄谷を目指すが、途中から硫黄の臭いのする川に沿って行くと、地獄谷にあと少しの所では黄色、黄緑、赤色の紅葉がすばらしい。最後の写真を撮って、先へ進み、県民の森への分岐を左手に分かれて尾根まで登る。今日最後の辛い登りだ。何とか休まずに登り切りると、分岐のところでおばさんにお花畑を聞かれたので、30分くらいですと答える。そして、そのまま下って黒倉山を巻き、4時間半ぶりに姥倉への分岐に着いた。黒倉から姥倉への途中に森林帯があり、意外な印象を受けた。
13:50姥倉分岐、今日のルートを遠望し、岩手山を見納める。
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 姥倉では水を飲み干して、前面の最後に見る岩手山のスケッチをした。今朝登ったルートがすべて見渡せる。鳥海に似ているが、こちらの方がスケールが倍大きい。そこにいたオバタリアンが、大便したいけど人がいてどこにもできないとブツブツ言いながら、岩手山小屋目指して歩いて行った。そこから私たちはもと来た道を下って行く。水場の広場ではたくさんの人がいる。そこも過ぎてリフトへの近道を巻いて通っていく。荷物をデポした地点に近づくが、なかなか見えないので一瞬焦った。しかし、近づいたら元の通りにあったので、友人もたいへんホッとした。荷物を詰め直して、ゴミを外に出して手でぶら提げる。そしてリフトの方に向かう。
リフトは750円だが、一万円札しか持っていなかったので、それでも大丈夫だった。片道750円は高いのではないかと思ったが、乗ってみるとずいぶん長く、それを3本も乗り換えるもので、これを歩いたら大変だから、かえって安いと思った。リフトの最後の乗車口で、係員のおじさんが、ここからでも60人くらいは降りて行ったので、温泉への宿泊は無理でしょうと言う。下に降りてレストハウスで聞いたらやはり無理だった。バスの時間まで1時間半あるので、それならば上の国民宿舎で風呂に入ることにした。坂を上がって行き、愛想のないフロントのおっさんに500円支払って風呂に入る。誰も番をしてないので、自由に入れるじゃないかと思ってしまう。風呂は以外に狭くて、これから着るものと分けて荷物を整理してから入浴する。温泉は乳白色で、洗い場がふさがっているのでしばらく浸かっていた。湯が濁っている。しばらくするとようやく顔が火照ってくる。友人はすぐ出て空いているところに座るが、水が出ないようだ。私はしばらく洗い場が空くのを待つが、他のみんなにうまく入られてなかなか要領良く入れない。堪りかねて洗い流したおじさんの後ろで早くしろよと念じたら、おじさんがようやく立って空けてくれた。顔を洗い、全身を洗ってタオルですすぎ、もう一度入浴して、最後に水を被って出てくる。ザックを入れ直して外に出ると、友人はビールを飲んでいた。まだ16時過ぎなので時間があるから食事しようとレストハウスに戻るが、閉店していた。仕方なく、テラスに座ってスパゲティを茹でる。通る人たちがみんな不思議そうに見て行くが、お構いなしだ。茹であがって小さい器に移し、そこにまた水を入れて、今度はミートソースを温める。その間、友人のホタテの缶詰を肴にビールを一杯やる。16:35過ぎにようやく沸騰して、ミートソースをかけて食べた。間に合うかなと心配したが、友人の予想通り16:45には食べ終えた。このミートスパゲティはケチャップの味が濃くてもうひとつだ。急いで荷物を詰めて、ゴミを捨ててバス停に急ぐ。10人くらいしか並んでいなくて、楽勝で座れそうだ。バス停に荷物を置いて、急いでトイレに行き、最後にダメ押しのビールをもう1本買って帰ると、今度は友人がトイレに行く。そのうちにバスに乗車すると、友人はすぐに帰って来たのでほっとする。
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国際興業系のバスは小岩井農場を経由する。そこでたくさん乗ってくるが、何とか荷物を座席に置いたままで収まる人数で安心する。うとうと眠っているうちに盛岡駅に到着した。
17:15盛岡着アイスクリーム440
新幹線の時間を見てどうするか考えたが、18:10特急券を急いで買ってホームに上がる。自由席にはまだ空きがあり、2号車に二人並んで座った。青森からのはつかりが遅れて、接続のために少し遅れて発車する。その乗り換えの人たちがどどっと入ってきて満席状態になる。車内では巨人優勝というニッカンスポーツを読み、盛岡駅で買ったアイスクリームを食べる。友人はもううたた寝しているから、中村元の「原始仏教の起こり」を初めから少し読んだ。仏教が起こる前にアーリア人が大移動し、白人と黒人の人種が結合して従来のカースト制度が崩れ、どんな思想も自由になって、善悪を否定することも許される。そうした中、合理的ないくつかの思想が生まれて仏教へとつながっていく。これがインド哲学の背景だったのだ。もっといろいろ読んで専門家になりたいとも思った。
18:10盛岡発やまびこ544,530
21:12大宮
埼京線武蔵浦和に行き、乗り換えて東所沢に向かう。今回の裏岩手縦走は、荷物が重いことと、寝不足のためにすいぶん疲れた。岩手山から見えた縦走路はすごくなだらかでいつも憧れている高原の道に見えたが、実際は湿っぽくて泥だらけになり、ほんとうに苦しかった。大深山荘で留まっていたら、翌日は岩手山まで遠すぎてギブアップしたかもしれない。もしくはもう1日かかったかもしれない。八甲田の山なみとこの八幡平からの道はとても似ているが、大雪山のように歩き易くはない。ただ、姥倉分岐から見た岩手山の様子は圧巻で、一度もガスに遮られなかったのは幸運だった。岩手山頂のカルデラは、なんか神秘的だったが、お花畑は予想より狭くて拍子抜けだった。しかし、地獄谷の紅葉や帰りのリフトから見る犬倉山の紅葉はそれなりに美しく、下から多くの観光客がリフトで上がってくるのもうなずける。かなり厳しい登山であったが、体にはさほどダメージがない。二日目にほとんど空身で歩いたのが功を奏したのかもしれない。これからは空身のピストンも重要視しないといけない。
22:00東所沢