1990年7月31日~8月6日「北海道大雪山縦走」②高根ヶ原~トムラウシ

1990731日~86日「北海道大雪山縦走」②高根ヶ原~トムラウシ
84
10:50白雲小屋
イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 411:40高原分岐 大雪高原沼が眼下に広がる。女性のみで10人くらいのパーティがいくつかあった。そのうちの一つを追い越し、先をどんどん急ぐ。高原温泉分岐の辺りからは高原温泉とその周辺の沼が見下ろせた。ヒグマが時々出ているようで、2年目と同じく沼への直下ルートは通行止めとなっている。霧があった時は下から全く見えなかったのでもっとなだらかな山々かと思っていたが、この辺りは富良野旭川側がなだらかで、こちら側は断崖絶壁に近い構造になっている。
イメージ 5
 この尾根はすごく平らでいいけれども、行けども行けども終わりが来ないし、やがて単調で楽しみもあまりない。高原温泉も視界から消え、見渡す限り広い高原で、景色がほとんど変わらない。一番厳しかった目前の丘を登り切ると、忠別岳の手前にもう一つ丘があり、またそれを30分近くかけて登り切ると、また丘がある。何度繰り返したであろうか。もう我慢を通り越して諦めの心境で惰性で歩き続ける。ようやく最後の丘とおぼしき手前に忠別湖が静かに横たわっていた。
イメージ 7

イメージ 6
 黄色いユリ科と思われる花が群れをなしていて、咲き集っている。疲れているし、のんびりと休みたい雰囲気だ。しかし湿原なので水辺に座ることはできない。湖の向こうの丘に登る途中の眺めのいいところに座ることにして、中腹まで登っていき、腰を下ろした。昨晩ほとんど一睡もせず、朝も早くから歩き続けて重労働をしてきたので、身体もばて気味になってきている。座った途端、どっと疲れが出てきてギブアップしたいような気持になる。水筒のウーロン茶をがぶ飲みし、少し生き返ったが、引き返すことも留まることもできないので、これから先の道のりを考えると、あまり気持ちに余裕が出てこない。少し休んで、まだ身体が寝てしまわないうちに意を決して歩き始める。また丘の連続となったが、もう大きな山越えは無くなり、だらだらの登りの坂道を、一歩一歩休まないよう辛抱強く歩き続けた。向こうの方に人が見えてきた。忠別岳の案内標が立っていて、やっとこの長い行程を走破した。
イメージ 8
 行っても行っても着かない山で、ようやく着いて、またお茶をがぶ飲みした。こちらから登る忠別岳は緩やかな勾配で易しい。逆に言うと、あまりパッとしない山のように思われたが、向こう側は気が遠くなるほどの断崖で、少し近寄って覗いてみたが、足がすくんで恐ろしい。反対方面から来たグループがいて、そのうちの一人が足を投げ出して崖の端に座っているのでびっくりした。世の中にはいろんな人がいるものだと思う。私なら1万円もらってもできない。時間が許せばトムラウシへ一気に登りたかったので、少し休んだ後、五色岳への道のりを急いだ。急な坂をずっと長い間降りて行ったが、五色岳との間の谷あいに忠別岳小屋と雪渓が小さく見える。
イメージ 9
14:20忠別小屋分岐 テントが4~5個張ってあるが、この辺りまで来ると出会う人の数も少なく、なんだか淋しいような感じだ。旭岳や白雲岳などの小屋に比べるとひっそりしている。ハイマツの中をかぎ分けて降りていき、今度はハイマツの中をかぎ分けてやけくそになって登っていき、やっと五色岳に辿り着いた。
イメージ 1014:50五色岳 沼の原と五色が原が一望できる。左手に遠く沼の原が見下ろせる。五色が原も見えたが、遠すぎて花は見えず、広い草原という印象しかない。けれども数キロ四方に広がるこの草原には、日本庭園顔負けのような景観のところもあるそうだ。時間が許せば寄ってみたいが、今はそれどころではない。髭のある初老の人と女性二人の三人連れが先を行く。ずいぶん歩いたような気がするが、なかなか化雲岳が近づかないし、ヒサゴ沼らしきものも見えてこない。途中で先行する人を追い抜いた頃、左手に沼が見え始め、もう少し進むと、それが広い沼がいくつかある庭であるのがわかった。神遊びの庭と言われる場所だ。
イメージ 11
300m四方ありそうな一段低くなった平地に、よく整備された庭園のような広い庭がある。お鉢平から更に一歩進んだ驚きの景観なっている。左手下方に見える雪渓を人が歩いているのが見える。トムラウシのこともあり、どんどん進む。丘を登り切ると分岐に出る。
イメージ 12
15:45化雲岳分岐 そこから下りを進み、ヒサゴ沼への道に折れ、丘陵をどんどん下っていく。下方に先ほどの雪渓が見えてくる。
イメージ 13
何とそこに一本の茶色い踏み跡の付いた道が一直線に続いているではないか。そして、先ほどの三人連れが歩いているではないか。やられた。これほど苦しい思いをして何とか登ってきたのに、あの神遊びの庭を少し越えたところを曲がっていればわざわざ登らずに済み、しかも涼しい氷の上を歩けたのだ。悔しい気持ちのまま、やっと見えてきたヒサゴ沼へ急ぐ。かなり前を歩いていたと思われる三人連れが、だんだんスピードが遅くなって、雪渓の終わりを下る頃にははるかに後方にいた。雪渓が歩きづらいのか女性が遅いのか、ともかく沼への道を辿り、小さな林を越えて、水場に一気に下りた。みんなが上の方に登って水を汲んでいるので、きっとここで水を取るのだろうと思ったが、小屋が満杯で入れなくなっても困るという焦りと、まだトムラウシへの挑戦も可能性があるので、再出発して再び通る時に水筒で汲もうと考えて、そのまま小屋に向かう。
16:15ヒサゴ沼 やはり小屋は満員で、なんとか強引に入り込んで荷物を置いてホッとした。山の男たちのくせにみんなたいへん不親切で、中年のおじさんおばさんはどうしようもない。泊まる場所がないから少しでもずらして寄ってくれればいいのに。しかし、もうこれからトムラウシへ往復する気力は全く失せて、とても動ける状態でなくなった。とにかく、びっこを引きながら先ほどの水場に行って、冷たい水を水筒いっぱいに入れてくる。もう一気に疲れが出て、17時くらいだったが、横になって休んでしまった。とてもトムラウシを狙える状況ではなく、明日の天気や健康状態に委ねるしかない。周りの人たちは元気で、私が1時間ほど軽くひと眠りして起きた時、焼酎などを取りだして宴会をやっている。私は少し横になって元気が出たので、まだ明るい外に出て記録をつけた。しかし、沼地なので虫が多く、とても快適な場所ではない。周りの人たちの様子を見ていて、私はキャンプには基本的に反対だ。汚い虫が多いし、不便で何をやってもわざわざ食器を揃えて、出てきた虫を気にしながらやらなければいけないからだ。早々に切り上げて、小屋に帰って寝袋に足を突っ込んでまた記録をつけ始める。19時を過ぎるとあたりも暗くなり始め、今まで荷物を置いていた人たちが帰ってきた。無理やり割り込んでしまった五人連れの女性たちも帰ってきて、場所を少しずらしてもらって、何とか寝場所をキープできた。右隣の人はずいぶん遅くになって帰ってきたが、髭があって学者風の丸い眼鏡をかけた体格のいい中年だったが、近づいてくると少しアルコール臭くて参った。環境が環境だけに仕方なく、寝てみるとさほど気になるものでもなかった。ここまで来たのだから、明日は何とか神々の庭や日本庭園、北沼、天沼、トムラウシからの眺望を見納めることができれば、大雪山は一応卒業できる。次からは侘び寂び、空海密教の研究に進みたい。しかし、この沼を見渡すと男女連れのチームが本当に多い。わいわいやるのも楽しいかもしれないけれど、女の子たちはこんなに不潔なので大丈夫なのだろうか。みんなでワイワイやるのなら、部屋でゲームをしたり、旅館に泊まって一晩騒ぐ方が快適で面白いような気がする。たとえば彼女と二人でテントを張って一晩いたとしても、確かに大自然の中で話はたくさんできるかもしれないけれど、もう一ついいとは思えない。それを考えると、これ以上山登りに深入りすることはないかもしれない。
 
85日 4時少し前に、空がほんのり明るくなってくると、小屋の人が暗い中一斉に起きて行動を始めた。結構、小屋中が騒然として、あまり環境が良くないので私も抜け出したくて、少し遅れて身支度をし、トムラウシに向かうことにした。
イメージ 144:00ヒサゴ沼 昨日の疲れから考えると、よくトライする気になったと我ながら感心する。雪渓とロックガーデンを越えていき、途中岩の隙間からオコジョのような可愛い生き物がついてくる。しかし、今はかまっている暇がない。
イメージ 154:30分岐 分岐に辿り着くと、水筒やカメラ、地図だけ持って、リュックサックは分岐標識の木にデポして、軽装でトムラウシに挑戦する。
 すぐ目の前の丘を登ると、そこは想像を絶する、枯山水のような立派な庭だった。
イメージ 26

イメージ 25
 大岩石が石庭のようにそれぞれ思い思いに立っていて、それを飾るかのようにまわりにハイマツや低木が集まっている。さらに驚くことには、それが30分以上も続いていることである。京都で贅を尽くしてもせいぜい500m四方までだ。それほど大きいのも桂離宮くらいかもしれないし、桂離宮でさえこれほど整然とした立派なつくりにはなっていないだろう。外見だけに囚われがちな虚しさを感じるとともに、これほどスケールの大きい自然の庭園を見せつけられると、人間の本当にすべきことは見せかけの庭ではなく、もっと内面的なもの、侘び寂びなどで磨くべきだと思った。そこが自分も進むべき道だという気もした。
5:00天沼 朝日をだんだんと浴びて、少しずつ輝きを増している湖面に、何かしら神秘的なものを感じる。また、岩の間を通っていって、下ると、そこは日本庭園のようになっていた。
イメージ 27

イメージ 29

イメージ 28
 直前まで大きな岩が邪魔してわからなかったが、谷へ降りた時に気がついてハッとした。雪渓の上の小さな谷にきれいに小じんまりとある沼は本当に日本庭園そのもので、わざわざ無理してここまで来て良かったと思う。
イメージ 16

イメージ 17
そこから二段構えの岩の丘をやっとの思いで越え、トムラウシ直下の北沼を見下ろせる場所に来る。
イメージ 18

イメージ 196:00北沼 高度が高いので、風が吹いてきて湖の水面にさざなみが立っている。どこからも水が流れ込んでくるわけではなく、雪渓の雪が融けているだけなのに、水はとても澄んでいて、美しかった。そして、海ではないのに、波が織りなす四重奏は高地ならではの涼しさに一層趣を与えてくれる。
イメージ 206:30南沼 美味しい水で水筒をいっぱいにしたかったので、頂上は後回しにして、南沼キャンプ場の雪渓で水を入れる。テントの上の方に水筒を持った人がおり、雪渓なのであそこがきっと水場だろうと、そこへ一目散に進む。ちょろちょろと流れるような水場ではなく、雪渓から滴る水を汲んでいたようだ。雪渓の中に入って、一番澄んでいるように見える一番奥のところまで行き、水筒の蓋で一口飲んでみた。冷たくておいしい。その滴りに水筒の口を持っていき、おいしく冷たい水でいっぱいにした。
イメージ 21 トムラウシ温泉への分岐が分からずに少し不安になったが、道標があった。はるか前方には十勝、美瑛、オプタケシテなどが連なり、朝日を浴びて赤い。左手下方には、秋吉台をもっと整然としたような岩が点々とあるトムラウシ公園が見える。そこから急な登りをどんどん登って、山頂を目指す。
イメージ 227:007:15トムラウシ山頂 高所恐怖症の私にはすこしこわかったが、てっぺんに登りきるとそこは少し広い、岩に囲まれて安全な砦のようになっており、なんだかホッとする。
イメージ 23
 疲れはもうとっくにピークを過ぎていて、腰をおろして冷たい水をがぶ飲みし、黄金が原や昨日歩いてきた旭岳の方を見渡した。風は適度に涼しく、なかなかいい状態だ。
イメージ 24
しばらくじっとして、いろんなことを考え、記録にも残したかったが、バスの時間もあるので下りを急ぐことにした。途中、トムラウシの本当の火口の端を通り過ぎ、急な岩をどんどん降りて、北沼まで戻り、そこから重い足に鞭を打って日本庭園、天沼の方に行く。
7:35北沼
8:55分岐 なんとかかんとか荷物をデポした場所まで降りて行き、化雲を目指す。いつもこれが最後の登りだと言い聞かせながら、ずっと頑張る。急坂を何度も休み、時には岩の上に倒れ込んで休んだりしながら登り切り、そこから化雲までのだらだら坂をやっとの思いで登り切った。
9:40化雲岳(カウンダケと読む)早々に下り一方の天人峡へ急ぐ。誰にも会わない。どんどん行くが人の気配がない。景色はもう見慣れたものであったが、黄金が原の全貌は凄かった。遥かに広がる台地は本当に広くて、残念なことにカメラのフィルムが無くなってもう写真に撮ることができなくなったが、最後の思い出としては最高の眺めだった。そして、下界のはるか下の方に見える第二公園目指して出発する。
イメージ 3010:30小化雲岳 大阪から来た二人のお兄ちゃんとおじさんがナキウサギを待っている。10分前にいたそうだが、どこかに行ってしまったそうだ。のんびり待つことができて羨ましい。私は、ビスケット3枚と水を飲んで、時間がないので先を急ぐ。ここからの第二公園、第一公園は長~い、長~い行程で、姿見池より高度が低いので暑く、森林の中で虫も多い。牧場で働いていた頃のような道ともぬかるみとも言えないような、牛の通った跡のような道が続く。行っても行っても全く景色は変わらず、終わらない。途中で二組ほど頂上を目指すグループに会ったが、よくこれから上に行けると思う。旭岳温泉から登ったのは正解だった。ロープウェイで苦労しないで小化雲岳の麓ぐらいの高さまで運んでくれるからだ。長い長い道のりを、今か今かと思いながら下っていき、第一公園らしき所に着く。
12:10第一公園着 そこからも疲れもあって長かった。途中で何度か腰をおろして大木の根っこに座って休んでいると、蜂がぶんぶんまわりも飽きもしないで飛び回る。私の周りを衛星のように懲りずに飛び回る。低い高度の森林は虫が多いし、湿気もあり、やっぱり嫌だ。嫌だからこそ先を急ぐ。早く下に降りて温泉で身体を流したい。しばらくすると滝のごうといういう音が聞こえ始める。それでもずいぶん歩いても滝見台は近づかない。そうこうしてどうにかやっと滝見台に到着する。
13:30滝見台 女性三人連れがいたが、去ってしまった後に、滝を見ながら少し休むことにした。20分くらいいたであろうか。小化雲のところでナキウサギを待っていたおじさんが降りてきた。この人は天人峡に車を止めて往復しているそうだ。旭岳から入ったことを言うと、おじさんも正解だと言ってくれた。とにかく、この長いだらだら坂は我慢の限界をはるかに越える。これではとても耐えられない。さて、ここから麓までが険しく危険だと思っていたが、おじさんが言うには、何度も何度も折り返す綴ら坂で、危ないところはないという。少し拍子抜けしたが、有り難かった。汗も結構かいたが、ずっと100m毎に自分で計算しながら降りて道路に出た。目の前に自販機があり、たまらずコーラを買ってがぶ飲みする。しかし、疲れていて、急に飲むとすこし辛かった。バス停を探して時間を確認すると、あと1時間くらいあるので、橋を渡った温泉に行って身体を流した。
14:30天人峡 ホテルの温泉で身体を流す。あまり汚い恰好なので断られないかと心配し、旅館の目前で汗を拭い、できるだけ平静を装って旅館へ入る。心配するまでもなく、意外なほど簡単に入れてくれた。もう泥や虫などでまみれた身体には少しでも早くおさらばしたい。荷物をすべて出して風呂に入る。体中日焼けしているので、ヒリヒリしてお湯は使えないが、全身汗だくで火照っていたので、冷たい山の水がとても気持ちよく、すっきりできた。体重が72.5kgになっていた。よく考えればあまり食べていなくて、水も節制していたのだ。もうこれは完全なオーバーワークである。しかしいいこともあるもので、お土産を買ってバスのタダ券がもらえたので、少し得したような気がした。長い長い旅の締めくくりは、天人峡温泉での水浴びとなった。入浴料500円、お土産のキタキツネ1000円×2
15:35天人峡発 バスのタダ券がもらえる
16:35旭川
17:00発 特急ライラック
18:32札幌着 「ホテルスタッセ」(南5西2)奇跡的に予約できる6,880
「萬来軒」(ラーメン横丁)塩ラーメン620円 麺がしこしこして本当に旨かった。
23:20ホテルの部屋にて
今日は本当に疲れた。足にはマメが数か所でき、歩くにもびっこを引くほどだ。しかし、本当に辛かったがトムラウシに登れて良かった。京都の枯山水はまったく問題にならない。普通の庭園なら100m四方でも結構贅沢なのに、スケールが違う。ここは風は涼しく、岩が絶妙に配置され、低木がまわりを飾る庭園が3km四方、歩いても歩いても終わらない。夏の間はきっと神々は麓に降りて人間を見ていて、きっと秋の終わり頃、人が来なくなってから、美しい紅葉の中、この庭で宴会をするのだろう。残念ながら神々の庭は近くで見られなかったが、その方がいいのかもしれない。7年前にお鉢平に神の存在を感じたが、本当の家はトムラウシ連山にあったのだ。日本庭園、北沼、天沼、壮大なスケールの黄金が原、どれも物凄い絶景である。旭岳温泉からずっと縦走してきたが、全く比較にならない。みんなが苦労してでも登ってくるのも当然だ。今回の旅は本当にラッキーだった。旭岳から登って南に縦走するのが一番楽だ。他から登ると、ロープウェイの分も登らなければならない。化雲岳から天人峡へ降りる途中、姿見以上に高層庭園になっているのは化雲岳の麓までで、そこから延々と続く第一、第二公園は蒸し暑く、虫も多くて、とても快適とは言い難かった。そこまで登るのに5時間以上かかる。それを旭岳ロープウェイは20分弱で連れて行ってくれる。最後に大雪山が晴れてくれてたいへん満足だ。大雪は3度目だが、今回は南の端まではっきり見れた。見渡すとこんなに近くに見えるのかと思う。霧の中ではどこまでも遠く広がっていてつかみどころがない。本当に良かった。
 
86
6:00ホテル発
7:00札幌駅 特急北斗2
7:28千歳空港着
8:20発 JAL500便
 今回の休みはほんとうに長かった。小樽で一日うろうろしたり、利尻へのフェリーの中で寝苦しく、朝方は気分が悪かったことや、バス停留所でぼけーっとしていたことなど、はるか昔のことのように感じられる。今、飛行機の中にいるが、帰りたくないとか、逆に早く帰りたいとかいうような気持ちが少しもない。現状から逃れてしまって忘れ去ることができたからと、大雪登山で満足を通り越して限界をはるかに超えるほど疲れたことで、また一つ大きな視界へ登り、世界がまた少し開けてきたので、小事にあまり気にならなくなったからだろう。旅行に来る前の気持ちと、終わった今、それを読み返して結論はどうであったか、どんな点が変わるのであろうかということはまた後で振り返ることにするが、一人で自由に7日間もいたので、ほんとうにいろいろとよく考えさせられた。
9:50羽田着